タムロンが60mm F2.8マクロと90mm F2.8マクロの特許を出願中です。 2本ともAPS-Cに対応し、換算焦点距離は90mmと135mmです。 レンズ枚数の多さが気になりますが、手振れ補正にも対応しているのでNEXには欠かせないレンズになるかもしれませんね。

patent embodiment1: 60mm f/2.8 Macro VC (APS-C)
特許文献の説明・自己解釈
- 特許公開番号 2013-130724
- 公開日 2013.7.4
- 出願日 2011.12.21
- 実施例1
- 焦点距離 f=61.22mm
- Fno. 2.88
- 半画角 ω=13.34 - 9.59 - 7-56°
- レンズ構成 10群13枚
- 対応フォーマット APS-C
- フローティング(移動量は、第1群が34.8mm、第2群が21.6mm)
- 実施例2
- 焦点距離 f=87.38mm
- Fno. 2.86
- 半画角 ω=9.42 - 6.78 - 5.34°
- レンズ構成 10群13枚
- 対応フォーマット APS-C
- フローティング(移動量は、第1群が51.9mm、第2群が40.3mm)
- 実施例3
- 焦点距離 f=92.50mm
- Fno. 2.88
- 半画角 ω=8.89 - 6.37 - 5.08°
- レンズ構成 9群12枚
- 対応フォーマット APS-C
- フローティング(移動量は、第1群が50.1mm、第2群が32.1mm)
- 実施例4
- 焦点距離 f=46.35mm
- Fno. 2.88
- 半画角 ω=13.12 - 9.09 - 7.13°
- レンズ構成 8群11枚
- 対応フォーマット 4/3"
- フローティング(移動量は、第1群が25.0mm、第2群が19.6mm)
- タムロンの特許
- 正正負の3群構成
- 防振 (第3群)
- 前群繰り出し(Front Focus)
APS-CとAF速度
画角を揃えたい場合、大きなフォーマットはより長い焦点距離を必要とします。 設計思想が同じならば、焦点距離が長い分だけレンズの移動量も増え、AF速度に不利になってしまいます。 最適化の度合いは異なりますが、同じ特許文献内にある実施例1と4を例にするなら、その速度差は次の通りになります。
- 34.8/25.0=1.392
- 60/45=1.333
上の式はレンズの移動量、下の式は参考までに焦点距離の比です。 レンズの重量や組み込まれたアクチュエーターの性能にもよりますが、APS-CのAF速度は4/3"よりも1.3~1.4倍も遅くなってしまいますね。 XF60mm F2.4R Macroは最大撮影倍率を敢えて0.5倍に抑えてありますが、これは性能の最適化だけでなく、AF速度を考慮してのことかもしれません。
また最大撮影倍率の重要性は昔より薄れました。 1:1の等倍撮影した場合、APS-Cなら換算1.5倍、4/3"なら換算2倍になります。 撮影倍率を換算値に揃える場合、レンズの移動量はそれぞれ1/1.5と1/2で済みます。
- (34.8/1.5)/(25.0/2.0)=1.856
- (60/1.5)/(45/2.0)=1.777
- (2*2)/(1.5*1.5)=1.777
参考までに3つ目の式は撮像素子の面積比です。 実用性を加味すると、4/3"の方がAPS-Cよりも1.7~1.9倍もAFが速いということになります。 但し詳細な設定を行えるリミットモードが必要になります。
では4/3"の方が有利かと言うとそうではありません。 マクロ時にパンフォーカスを狙うなら4/3"ですが、ボケ量を狙うならAPS-Cです。 画素数や高感度でAPS-Cの方が有利ということもあります。
仮にタムロンがNEX用の60mm F2.8マクロとμ4/3用の45mm F2.8を同時に出したら、 NEX用のAF速度に不満を持つユーザーが必ず現れ、ソニーとの共同出願が多いタムロンの立場はあまり良くないかもしれません。 AF速度は原理的に仕方の無いことであることと、撮像素子の大きなカメラで使えることをアピールしてほしいものですね。
Inf | 0.5倍 | 1.0倍 |
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左から順に、球面収差、非点収差、歪曲。
先週のニュース等
デュアルピクセルCMOS AFのEOS70D
像面位相差AFが本来あるべき姿になりました。 これは感無量としか形容のしようがありません。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20130702_605994.html
なおデュアルピクセルCMOS AFはライブビューAFを高速化したが、位相差AFセンサーには速度面で及ばない。画像蓄積などの時間が必要なためだ。
像面位相差AFはここ2年程の間に一斉に出てきましたが、スタートラインが同じというわけではありません。 アルゴリズムは位相差AFのものを使えるわけですから、高度に完成されているキヤノンやニコンは立ち位置が非常に有利です。
像面位相差AFの特許申請を殆ど見掛けないメーカーの先行きも気になります。 パナソニックはコントラストAFのウォブリング駆動を発展させ、動体追従AFを進化させるのでしょうか。 60mmマクロと45mmマクロの関係の様に、レンズの移動量が少なくて済むことを利用すれば、APS-Cより有利になる可能性もあります。
像面位相差AFはまだまだ課題がありますし、当面はOVF用の位相差AFセンサーも使われるでしょう。 動体ならEVFや背面LCDのタイムラグも改善しなくてはなりません。 各技術とも互いに競い合って発展していってほしいものですね。