ソニーが1.00-3.62mm F4.5-6.3の特許を出願中です。 フルサイズ換算で87-315mm相当、APS-C換算で55-210mm相当になるスケーリング前提の特許出願のようです。

patent: 1.00-3.62mm (APS-C equiv. 55-210mm, Full-Size equiv. 87.0-315mm)
特許文献、及び要約・自己解釈
- 特許公開番号 2013-37105
- 公開日 2013.2.21
- 出願日 2011.8.5
- 実施例1
- 焦点距離 f=1.00 - 3.62mm (APS-C換算 57.1-207.2mm、フルサイズ換算 87.0-314.8mm)
- Fno. 4.64 - 6.49
- 半画角 ω=13.95 - 3.92°
- BF 0.320 - 0.929mm (APS-C換算 18.3-53.1mm、フルサイズ換算 27.8-80.8mm)
- レンズ構成 9群13枚
- 非球面 4面2枚
- EDガラス 3枚
- 実施例2
- 焦点距離 f=1.00 - 3.94mm (APS-C換算 57.9-228.0mm、フルサイズ換算 88.0-346.7mm)
- Fno. 4.45 - 7.30
- 半画角 ω=13.79 - 3.54°
- BF 0.441 - 1.041mm (APS-C換算 25.5-60.2mm、フルサイズ換算 38.8-91.6mm)
- レンズ構成 9群14枚
- 非球面 3面2枚
- EDガラス 2枚
- 実施例3
- 焦点距離 f=1.00 - 3.45mm (APS-C換算 57.1-196.9mm、フルサイズ換算 86.8-299.6mm)
- Fno. 4.66 - 6.48
- 半画角 ω=13.97 - 4.10°
- BF 0.333 - 0.911mm (APS-C換算 19.0-52.0mm、フルサイズ換算 28.9-79.1mm)
- レンズ構成 9群13枚
- 非球面 3面2枚
- EDガラス 3枚
- ソニーの特許
- 正負正正負
- インナーフォーカス (第4群)
- 防振 (第5群の1部)
wide | tele |
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左から、球面収差、非点収差、歪曲。
E 55-210mm F4.5-6.3 OSS
SEL55210 はこの特許が出願された直後に発表されており、また光学系もほぼ同一です。 ペンタックスはQの望遠ズーム、 キヤノンは特許出願のみ、 そしてソニー自身はSonnar E24mm F1.8 等で、スケーリング(スケールアップ、スケールダウン)を行ったと思われる前例があるので、スケーリングは最近また流行り出したのかもしれません。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
バックフォーカス | 入射角の検討し直し不要 | 無駄に長くなる |
収差 | 撮像素子の画素数を変更せず、画素ピッチを拡大すれば無問題 | 撮像素子の画素ピッチを変更せず、面積を拡大した場合、レンズ性能が不足 |
重量 | 硝材の重量は、スケーリング率の三乗倍 | |
開発期間 | 光学設計は短縮可能 | 鏡筒設計は別途必要 |
バックフォーカスはメリットとデメリットが同時に存在します。 上の要約に単純計算した値を載せましたが(タイポがあったらご容赦願います)、一眼レフ程ではないものの無駄な空間が生じることになります。 しかし射出瞳位置として必要な長さということの裏返しでもありますので、あながち無駄とは言えません。 撮像素子はZ方向には大きくならないと思われますので、単純なスケーリングではなく、微調整した方が良いかもしれません。
収差はスケールアップによってそのまま拡大されます。 例えばAPS-Cの2400万画素とフルサイズの2400万画素のように、画素ピッチもそのまま拡大すれば心配することはないでしょう。 しかしAPS-Cの1600万画素とフルサイズの3600万画素のように、 画素ピッチが大体同じでセンサー面積のみ拡大してしまうと、 スケールアップされたレンズは性能が不足することになります。
硝材の重量は、APS-Cからフルサイズへのスケールアップなら、3.375(=1.5^3)倍になります。 但し、鏡筒等の重量も同様に増えるとは限らないので、硝材が占める割合が重要ですね。
スケーリングはフルサイズへの布石
極小素子への布石で(ry
レンズ交換式カメラのフォーマットは種類だけなら銀塩フイルムの方が多いのですが、 一般人向けに広く流通しているという意味では、デジタルの方が多いでしょう。 極小システムを組めるペンタックスQ(1/2.3"~1/1.7")、 スピーディーなNikon1(1")、 小型ながら画質に秀でるμ4/3、 小型ながら高感度に優れるAPS-C、 定番フォーマットのフルサイズ、 画質至上主義の中判。
カメラのフォーマットに関わらず、ユーザーが必要とする画角は大体決まっています。 この状況下において、スケーリングを使わない手はありません。 フォーマット毎にレンズを用意しなければならないメーカーは、スケーリングによる開発期間の短縮は当然考えているかもしれませんね。